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ローマ史の格好の入門書:本村凌二『はじめて読む人のローマ史1200年』 [ギリシャ・ローマ]


ローマ人の物語は本としては面白いのでうが、やはり長すぎますし通読するのは骨が折れます。それにやはり「物語」なので創作も入っています。なにかもっとコンパクトなローマ史の本はないかと思っていましたが、ちょうどいいサイズなのがこの本です。著者の本村さんは専門のローマ史学者なので安心して読めます。


内容としては伝説の時代から王政・共和制を経て帝政にいたりローマ帝国の滅亡までをカバーしていますが、共和制時代にウェイトを置いた内容となっているので「ローマ帝国」に思い入れがある人にはあまり向かないかと思います。本村さんはローマの強さをローマが「共和制軍国主義」だったことに求めていて、名誉を重んじ国防意識の高い市民がたくさん存在していたことがローマを大国にのし上げたと考えています。


流行を反映してかテルマエについても触れられていて、ローマ人はタダ同然でテルマ詠入ることができ、国家が経費の大部分を負担していたためにローマが衰えるとてる前を維持できなくなったようです。水道の老朽化で水の確保が難しくなったこともあり、テルマエ文化は廃れてしまい中世には受け継がれませんでした。


ローマ軍の強さとして、ローマ式ファランクスは3列に並べた重装歩兵が交代しつつ戦っていたことを挙げて長篠の戦いでの信長の鉄砲隊に似ているとも書かれていますが、信長の「三段撃ち」とは三交代制のことではないといわれているのでこの点は少し引っかかりましたが著者は戦国史の研究者ではないのでここはあまり突っ込まないことにしましょう。全体として読みやすく、ローマ史への興味をかきたてるような書き方になっているのでローマ史の入門書としておすすめできる1冊だと思います。

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2017年大河ドラマは「女城主直虎」に決定。主演は柴咲コウさん [戦国時代]

今年は少し遅いなと思っていましたが、2017年の大河ドラマは「おんな城主直虎」に決定しました。主人公の井伊直虎を演じるのは柴咲コウさんです。来年が真田丸なので2年連続の戦国時代を舞台とした大河ドラマということになります。


篤姫が大ヒットして以来女性主人公の可能性にNHKが目をつけたのか、「江」以降は「八重の桜」「花燃ゆ」と一年おきに女性主人公の大河が続いていますが、今回もその例にならったことになります。


井伊直虎は戦国無双のキャラとしては既に有名ですが、実際どんな人だったのかはあまり知られていないと思います。と言いますか、私もあまり良くは知りません。有名な情報としては、


・戦のたびに当主が殺されたため、生き残った姫が「直虎」と男性名を名乗った
・戦国時代には珍しい女性城主だった
・徳川四天王の一人・井伊直政の養母


といったあたりでしょうか。


井伊直虎を主人公とした小説としては、高殿円さんの『剣と紅』があります。
アマゾンの内容紹介には「井伊直政は家康にむかって話を続ける。それを訊く家康の相づちは実に楽しげだ。
「十五の年、養母は、この男だけは絶対にいけないと強情なまでに言いはり、ついには髪を下ろしてしまいました。当時、今川義元公の庇護の下、繁栄を極めた駿府より、ありとあらゆる贅沢品を用意した縁談相手を前に、養母は一言、こう言い放ったそうです」
──紅はいらぬ。剣をもて。
戦国の世、女地頭と呼ばれた徳川四天王・井伊直政の養母、井伊直虎。彼女の熾烈な一生を描いた、『トッカン』の著者がおくる渾身の歴史エンターテインメント! 」とあります。
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秀吉は明を征服できる可能性があった? [東洋史]

豊臣秀吉の朝鮮出兵といえば秀吉晩年の誇大妄想による暴挙、ということになっています(最近はそうでもないようですが)が、物事には様々な見方があるものです。意外なことですが、陳舜臣さんは秀吉は実は合理的な計算をしながら朝鮮出兵を進めていた、という見方をしています。


このエッセイ集の中で、陳さんは「碧蹄館の戦いで勝利したことで、秀吉は明を攻めて天皇を北京に移す構想を考え始めた」と書いています。戦国時代を勝ち抜いた武将である秀吉に合理的な計算がないはずがなく、だからこそ李如松に平壌を奪回されると明の征服をあきらめています。秀吉は決して耄碌して誇大妄想にとりつかれていたわけではありません。


そして陳さんは小西行長が明との和平に動いていた点についても、彼が「ハト派」だったからではなく、行長が境の貿易商人の利害を代弁する存在で、娘婿が対馬の宗義智であることを考えなくてはならないことを指摘します。対馬の宗氏は朝鮮との貿易で収入を得ている一族なので、あまり朝鮮を叩きすぎては困るのです。行長が講和に積極的だったのも当然のことだったのです。貿易で朝鮮に対し有利な立場に立てる程度に勝てればそれで十分だったのです。


そして陳さんは実は日本軍は明軍に勝てる可能性もあった、と大胆な主張も展開しています。ただしそれはこの時点ではなく、魏忠賢が権力を握り、明を疲弊させた20年後であればという話です。明を征服したのは満州族の清ですが、日本は満州よりも人口・戦闘力も上回っていたので、もっと時期が遅ければ日本も明に勝てていたかもしれないということです。


しかし、そもそも明の衰退の一因となったのが秀吉の朝鮮出兵なのです。明は日本軍の撃退のために莫大な出費を強いられました。明は万暦帝の時代に滅亡の原因があると言われますが、そのひとつが朝鮮出兵です。日本国内に目を転じれば、朝鮮に出兵せず国内で兵力を温存できた家康に結局豊臣家は天下を奪われてしまいます。長い目で見れば、秀吉は朝鮮出兵により満州族と家康に天下を渡してしまったことになります。
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ややこしい軍人皇帝時代の格好の入門書!井上文則『軍人皇帝のローマ』 [ギリシャ・ローマ]


軍人皇帝時代といえば、短い期間に皇帝が乱立しローマ帝国の乱れた時代、というイメージがあります。実際、235~253年の間に12人もの皇帝が交代し、帝位は非常に不安定でした。どうしてこんなにも不安定なのか、と以前から思っていたのですが、本書をよめば理由がよくわかります。


まず何より、この期間には外敵との戦争が原因で政治が混乱していたのです。この時代、属州の軍団を率いる元老院議員には軍事経験が少なく、これを率いる皇帝の軍隊もまた弱体でした。ローマが軍事的に弱体であったことが内政の危機を招いていたのです。この状況を乗り越えるために重要な改革を行ったのがヴァレリアヌス帝です。


ヴァレリアヌス帝といえば、ササン朝のシャプール1世に捕虜になったというイメージが定着していて、これがローマの危機的状況の象徴のように語られるのですが、実は政治軍事の両面で重要な改革を行っている有能な皇帝でした。ヴァレリアヌスは政治面では帝国を東西に分け、息子のガリエヌスと分担当地を開始します。これはディオクレティアヌスの四分統治(テトラルキア)の先駆けをなすものです。そして軍事面においては中央機動軍を創設し、皇帝直属の軍隊を強化しました。騎兵部隊も大幅に増強され、これによって外的に迅速に対応できるようになります。これもまたコンスタンティヌスの野戦機動軍の先駆的な形態となるものです。


ヴァレリアヌスの息子のガリエヌスが暗殺されると、「イリュリア人」が帝位の多くを占めるようになります。イリュリア人とはドナウ川流域の属州出身の軍人のことですが、この地域は目立った産業がなく貧しいことから剽悍で勇敢な兵士を生むことで知られています。この野蛮だが優秀な軍人を生む土地から多くの皇帝が生まれています。「世界の再建者」と言われるほど優秀な軍人皇帝だったアウレリアヌスや「恒久平和」を目指したと言われるプロブス、そして軍人皇帝時代を終わらせたディオクレティアヌスもまたイリュリア人でした。


興味深いことに、著者はこのイリュリア人を東洋史における武川鎮と比較しています。武川鎮とは北周・隋・唐の建国者を生んだ辺境の軍事基地ですが、貧しく過酷な風土が勇敢で団結力の強い軍団を生んだという点がイリュリア人とよく似ているというのです。このような東洋と西洋の比較という点からも、この時代は興味深いと言えます。


ローマの属州統治やローマ軍団の仕組みについても簡単な説明があり、ローマ帝国のしくみについても本書を読めば概要が分かるなど、なかなかにお得な点もあります。あまり馴染みのないローマ帝国史後半を知るためには重宝する一冊だと思います。ローマ帝国後半の歴史書としては南川高志『新・ローマ帝国衰亡史』とあわせてお勧めです。

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「信長は本当に天下を狙ったのか~新発見・幻の上洛計画」 [英雄たちの選択]

最初の方を少し見ていなかったのですが、見た感じ大体近年の信長研究の内容を反映した内容になっていました。


新史料の発見により、信長は小牧山上にいた時点から京を目指していたということのようで、この時点で既に兵農分離を進めていて城下への家臣の集住も進めていたとのことです。兵農分離が進むことで専業の武士となった兵士はいわばサラリーマンのような存在となり、中世的な自立した農民とは違って主君に養われる存在となるのでそれだけ主君に忠誠を誓わなければならなくなります。信長は兵農分離を達成することで京に常駐できる軍団を作ったのですが、そもそも信長が上洛を目指したのはなぜか?この部分が今日の核心です。


信長はよく「中世の破壊者」であると言われますが、実際には信長はあくまで中世の価値観に忠実な人物だった、というのが今日の結論です。だからこそ義昭を擁立して京の秩序の回復を目指したのです。信長の「天下布武」もあくまで五畿内の秩序を回復するという意味で、全国統一のことではなかったようです。全国の大名に出す手紙に朱印で「天下布武」を押すということは、「天下」の範囲が日本全国ならば喧嘩を売ることにしかなりません。信長はあくまで将軍を中心とした畿内の運営を目指していたのです。中世的な秩序の回復を目指していながら結果的に兵農分離が起こり近世への道が開かれた、というのが面白いところです。


金子拓さんが言っていたように、信長の目指していたところは「天下静謐」というキーワードで語れるようです。信長が細かく義昭に注文をつけていたのも、将軍がしっかりしなければ天下の信頼を失ってしまうという動機からのようで、信長はかなり真面目な人だったのではないかと思います。しかし信長と義昭は結局決裂し、義昭は京から追放されてしまいました。こうなると信長は権威と大義名分を失ってしまいます。その結果四方の大名と対立し、領土を広げていくことになったのではないかというのが金子さんの見方でした。


ここはいろいろな見方のできるところで、信長は最終的には「天下静謐」を超えて全国統一の野心を持っていたのではないかと思います。ただそれは最初からそうだったわけではなく、「天下布武」を唱えていた頃には畿内の秩序回復しか考えていなかったのでしょう。歴史を結果から見ると信長のすることは全て全国統一への布石と見えてしまいますが、人の考えは段階的に変わっていくものだと思います。信長が当主になった時点では畿内の経営すら考えていなかったでしょう。


信長の「兵農分離」についてはまだ証明されていないという論者もいるのでここをもっと知りたいところではありますが、仮に信長が兵農分離を実現したとするならむしろ保守の中から革新的な政策が生まれたことになります。革新的な政策を行うのは本人が革新的な人物だからだ、と考えるのは先入観なのでしょう。信長という人物には多くの先入観が付きまとっているため、まずここをリセットして考えなければ信長の実像に迫ることはできないのだと思います。
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[読書]木谷勤『もう一度読む山川世界現代史』 [近現代史]


近代世界システム論で書かれているということで注目していた本ですが、実際読んでみると帝国主義以降の歴史を「中心」「周辺」「半周辺」の国家に分けて説明することでかなり明快に解き明かすことに成功していると思います。なぜ世界が今のような姿になっているのか?が、本書を読むことでかなり明確になると思います。


「近代世界システム論」とはウォーラーステインの提唱したもので、「中心」となる国家は自国の工業の発展のために「周辺」の国家に農作物や資源の生産に特化させ、低開発状態を押し付けて自国に優位な経済システムを構築しているというものです。この流れは1500年頃から始まるとされていますが、産業革命による工業化がよりこの流れを加速させています。工業が遅れた国家は「中心」諸国に経済的に従属し、多くは植民地化されていきます。近現代史は国家同士の関連が複雑であるために国家の関係をシステマチックに理解する視点がないと理解しにくく、そのための一つの有効な視点が近代世界システム論であるというわけです。


この視点から見ると、帝国主義というのも「中心」諸国が自国の利益に都合よく「周辺」諸国を作り変えていくプロセスであるということがよくわかります。「周辺」の国家がずっと周辺のままであるわけではなく、もともとは「周辺」だった日本も近代化に成功し周辺国を脱し、近隣諸国を周辺国として支配していくことになります。しかし帝国主義としては後発国である日本は経済基盤が脆弱であり、東南アジア諸国を「周辺」に位置付け日本を「中心」とする「大東亜共栄圏」も到底維持不可能でした。


第二次対戦に至る欧米諸国の政治状況についても、こうした世界システム論からの説明が試みられています。世界で最も先進的なワイマール憲法を持っていたドイツは大恐慌によるアメリカ資本の引き上げのダメージが最もひどく、結局大恐慌からドイツを救う功績のあったヒトラーに力を与えてしまいます。一方、フランスではフランス革命以降左派の勢力が強かったことに加え、広大な植民地を持っていてフラン・ブロックを形成できたことで恐慌の影響が緩和され、ファシズムの台頭も抑えられました。植民地の生み出す経済力が民主主義を守ったとは何という皮肉でしょうか。


第二次大戦後、アメリカが超大国として台頭したのも結局、「中心」国としてイギリスやフランスに財政援助を行い、大戦の勝利に大いに貢献したからです。強い経済力を持つ国家が結局世界を牛耳ることになるのは大戦後の歴史を見ても明らかです。これまでただの事実の羅列であった歴史を経済を軸として見ることで、かなり明確な見通しを得ることができます。ただの英雄物語ともイデオロギーによる断罪とも違う、現代史の書物としてかなり重宝する一冊だと思います。


現代に目を転じてみると、中国やインド、ブラジルなど、西洋列強によって「周辺」国とされた国が台頭し始めています。アメリカが覇権国家であった時代もいずれは過去のものとなり、これらの国家があらたなヘゲモニー国家として台頭するのか、まではわかりませんが、未来を見通す上でも本書を通じて現代史と世界システム論を学ぶのは非常に有益であることは確かです。
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ティムールの貴重な情報源 陳舜臣『中国の歴史6』 [遊牧騎馬民族]

中国の歴史 6

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価格:946円(税込、送料別)


陳舜臣さんは今年初め90歳で亡くなりましたが、陳さんの本は大学時代からよく読んでいたので特別な思い入れがあります。この方の『中国の歴史』は何度も繰り返し読みました。今でもその面白さは変わりませんが、この6巻の価値はティムールに触れている部分にあると思っています。この本が発売された当時まだティムールに関する本は少なく(今でも多くはないですが)、この人物に関する貴重な情報源になっていたのです。


ティムールは戦争の天才であったことで知られ、最終的には明の制服を企んでいたと考えられています。当時の明の皇帝は永楽帝で、こちらも軍人として傑出した才能を持っていました。ティムール20万の軍隊を率いて東征する途上で病没してしまいますが、生きていればこの両雄の激突が見られたのでしょうか。陳舜臣さんはこの件についてこう書いています。


「かりにこの老皇帝の率いる軍隊が、明と戦うことになっても、おそらく勝利は望めないでしょう。即位したばかりの永楽帝は、気力充実した壮年の将軍皇帝でした。その後の5回にわたる遠征でもわかるようにきわめて積極的でした。長途の遠征に疲れたティムール軍は、漠北の地に壊滅したにちがいありません」


中国人の陳さんはやや中国びいきに書いているかもしれませんが、ホームグラウンドである中国で戦えるメリットのある永楽帝の方がやはり有利ではあるでしょう。


ところが、ティムールはじつは明征服を目指していなかったのではないか?という見方もあるのです。ティムールのWikiを見てみると、「ティムールの東方遠征の真意については、単に戦利品が目的[192]、中国ではなくモンゴル高原が遠征の目的地だった、当時ティムールの元に亡命していた北元の皇子オルジェイ・テムルを北元のハーン位に就けて全モンゴルへの影響力を有する意図があったと諸説ある」とあります。モンゴル高原への遠征が目的というのは岡田英弘さんが『モンゴル帝国から大清帝国へ』のなかで書いていることのようです。


ティムールはチンギス・ハンに匹敵する存在となるため生涯中国征服を目的としていたとされ、陳さんもこの見方を取っているのですが、目的がモンゴル高原遠征だったとなるとまた情勢は変わってきます。ティムールはまずモンゴル諸族の統一を目指していたのかもしれません。しかしその場合でも、北方に大勢力が誕生することを恐れる永楽帝は必ず介入してくるでしょう。ティムールと永楽帝との対決はやはり避けられなかったのではないでしょうか。


ティムールが何を目指していたのかは知ることはできませんが、確かなことはティムールの子孫はティムールの征服事業を継承せず、明と和親の道を選んだことです。チンギスの子や孫の代になっても征服を続けた時代とはここが全く異なっています。チンギスの時代ですでに金王朝は衰退していましたが、まだ発展の途上にある明を征服するなど現実的ではないと判断したのでしょうか。
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世界史リブレット 人シリーズの新刊は冒頓単于と袁世凱 [遊牧騎馬民族]

8月25日発売の世界史リブレット人シリーズは冒頓単于と袁世凱です。二人とも東洋史の人物、というのは珍しい気がします。冒頓単于の方は『匈奴』の著者の沢田勲さんなので内容的には間違いないと思いますが、冒頓に関して史記で知ることのできる以上の情報って何かあるんでしょうか。近年の考古学的な発見等があるのなら読んでみたいのですが。


田中比呂志さんは中国近現代史の著書が何冊かあるようですが読んだことはありません。この二人ならどちらかというと冒頓単于の方を読みたいですが、この人一人だけで本1冊書くほどの情報量があるのかどうか…カール大帝みたいに前後の時代も含めて書くということかもしれませんが。


沢田勲さんの『匈奴』は匈奴についてコンパクトにまとまった良書です。興亡の世界史シリーズの『スキタイと匈奴 遊牧の文明』とあわせておすすめします。


8月25日発売の本としては鶴島博和『バイユーの綴織(タペストリ)を読む』も面白そうです。「イングランド人の王とノルマン人の公の戦いを描いた長大な絵巻から、史料を駆使して11世紀、北西ヨーロッパの海峡世界を読み解く」との事。
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東大生が優秀な理由:相澤理『歴史が面白くなる東大のディープな日本史2』 [日本史]




●東大の日本史は徹底して「なぜ」を問う


・朝廷はなぜ巨大道路を建設したのか?
・鎌倉仏教が爆発的に流行したのはなぜか?
・秀吉がキリシタンに感じた脅威とは?
・江戸時代に蝦夷地が果たした役割とは?
・伊藤博文が憲法制定を急いだのはなぜか?


これらの質問にちゃんと答えられる大人って、どれくらいいるのでしょうか。少なくとも私には自信がありません。東大の日本史を受験する高校生は、この質問に答える能力が求められているのです。これが質問文そのものではありませんが、こうした歴史の本質に迫るような質問に応えられる思考力を持っているか、が試されるのです。


よく「受験は暗記が重要だから、日本の受験教育では本当の思考力を育てられない」と言われることがあります。でもこの東大の日本史の問題を見てからは、とてもそんなことは言えなくなりました。本書に書かれた東大の設問を見ていくと、解答に必要な史料は、設問の中できちんと示されています。この史料を使ってどう設問に答えるかが問題で、難関私大で出てくるようなカルト的な暗記能力とは全く違う、総合的な洞察力とでも言うべきものが問われるのです。


例えば穴埋め式の設問が「トマトパスタを作るんはどんな食材が必要か」という知識レベルの問題であるのに対して、東大の問題は「必要な食材は揃えてあげるから、これでどんな料理が作れるか見せてくれ」というもので、問われているレベルが全然違うのですね。ここで問われるのは普遍的な思考力で、それは歴史以外にも応用が効くものです。誰も知らない細かい知識を知っていてもクイズ王にしかなれませんが、思考力を鍛えていればどんな問題にも対応できます。社会で必要とされるのは後者でしょう。


学歴社会が批判の的になることがありますが、これだけの問題をクリアしている東大生には一定の能力があると予想されるのはおかしなことではないはずです。良問というのは解答を導き出す上で歴史について深く洞察することが求められるということなのだな、ということがよくわかる1冊です。
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[読書]池上彰『池上彰の政治の学校』 [その他読書]



90年代頃、「出羽守」と呼ばれる人達の本が多数出版されていました。出羽守とはやたらと「欧米では…」と海外を引き合いに出して日本人や日本社会を批判する日本人のことです。そうした本では特に日本の若者が批判されることが多く、「日本の若者はろくに政治に興味も持たず、女性はブランドバッグを買いあさっている」などと言われていたものです。


ブランドバッグというところに時代を感じますが、若者が政治に興味を失っている、というのは今でも言われていることです。20歳から誰でも選挙権を持てる以上、政治に興味がないのは良いこととは言えません。しかし、それは本当に日本の若者がダメだからなのでしょうか?この本を読んでいくと、それは若者自身の問題ではなく、日本の政治システムの問題であることがよくわかります。


池上さんはこの本の中で、政治教育をしにくい学校教育の問題について指摘しています。アメリカの学校では実際の政策を披露して模擬投票を行う授業が行われていますが、日本でどの政治家に投票すればいいか考えさせると、教師がそんなに政治的なことをして良いのかと批判されるだろう、と池上さんは予想します。これは実際にやってみないとわからないところではありますが、右であれ左であれ、少しでも偏った結果が出ると「偏向教育」だと批判される事態は容易に予想できます。


そして、若い世代に訴えかけるような政策が行われないことも大きな問題です。民主党政権は株安や円高を招いたことで批判も多いですが、子ども手当が導入されたために若い夫婦世代を政治に関心を向けさせた功績は大きい、と池上さんは指摘します。経済効果も予想以上に大きく、これが恒久的な制度になっていればかなりのインパクトになったはずだ、とも池上さんは言います。どこにそんな財源があるのかは気になるものの、この政策にも一定の意味があったことは確かなようです。安倍政権にはここまで若い世代を惹きつけるような政策はありません。もっとも改憲や新安保法案はこれに反対するという点で、デモを行ったりする学生も出てきてはいるのですが。


さらに選挙制度にも問題があります。池上さんは「特別授業」の中でアメリカの大統領選挙について解説しますが、この選挙は一年という長期間に渡って行われます。大統領選挙には「予備選挙」があり、これは州ごとに誰を大統領に推すかを決めるものなのですが、池上さんが取材した共和党の党員集会では老若男女が集まって誰を大統領にするか議論が行われていたそうです。大統領選挙を通じて「民主主義の訓練」をしているのですね。このような環境が日本にないことも政治に興味を持てない人が多い原因だと思います。


この本自体が基本的に若い人向けで、「なんとか若い人に政治に興味を持ってもらって、選挙に行って欲しい」という池上さんの強い気持ちが伝わってきます。でも、この本を買う時点でその人は少なからず政治に興味を持っているんですよね。本当ならこういう本を読む気にもならない層こそ政治に興味を持つべきでしょうが、この本に書かれているような日本の政治状況が変わらない限り、現状はしばらく続いてしまうような気もします。
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